Visaがステーブルコインの利用状況に慎重姿勢、米国での明確な規制整備を要請

はじめに

クレジットカード大手のVisaが、ステーブルコイン(価格が安定した仮想通貨)の現状について慎重な見解を発表した。同社の2025年第2四半期決算説明会で明らかにされた内容によると、Visaがこれまでに処理したステーブルコイン決済額は2億ドル(約320億円)に達しているものの、決済手段としての本格的な普及にはまだ時間がかかるとの見方を示した。特に米国をはじめとする各国での規制の明確化が今後の普及の鍵を握るとしている。

Visaのステーブルコインに関する懸念

Visaのライアン・マクイナリーCEOは、ステーブルコイン決済について「初期段階にある」と表現し、2億ドルという決済額について「1つの節目ではあるが、当社の総決済量と比べればまだごく一部に過ぎない」と述べた。同社の決算発表によれば、2025年第2四半期の売上高は前年比14%増の101億7000万ドル(約16兆3000億円)を記録しており、ステーブルコインの取引量は全体のごく一部にとどまっていることがうかがえる。

専門家によると、現状のステーブルコイン取引のうち、実際の支払いとして利用されているのは10〜20%程度で、残りの大部分は暗号資産取引所での取引や流動性の提供に使われているという。VisaはVisa Directを通じて主に海外送金分野でのステーブルコイン活用をテストしており、従来の決済システムに比べて迅速な送金が可能になる点に注目している。

米国における規制の不透明さ

マクイナリーCEOは「米国政府がより明確で実用的な規制を導入することに期待している」と述べ、規制の不透明さがステーブルコインの普及を妨げている現状に言及した。また、これは米国のみならず他国においても同様の動きが求められるとの見方を示した。

この発言は、米国で今月成立した「GENIUS法」(仮想通貨の経済統合を進める包括的な規制枠組み)の動向も踏まえたものだ。同法は米国初の本格的な仮想通貨規制法として成立したが、ステーブルコインを含む幅広い分野での具体的な規制の詳細はこれから詰められる段階にある。

Visaが求める今後の方向性

Visaはステーブルコインの将来性について楽観的な見方を示しつつ、同技術の本格的な普及には明確な規制枠組みが不可欠だとの立場を明確にした。同社は「Visaトークン化資産プラットフォーム」を通じて、銀行が新たなプログラム可能な金融サービスを展開するための基盤整備を進めている。

また、Visaはロンドンを拠点とするステーブルコイン・インフラ企業「BVNK」への出資や、決済大手Stripeの子会社「Bridge」との提携を通じて、特に中南米を中心とした地域でのステーブルコイン決済サービスの拡大を図っている。

まとめと考察

Visaの発表は、ステーブルコインが決済手段として本格的に普及するにはまだ多くの課題が残されていることを示唆している。一方で、同社が積極的にこの分野に投資を続けていることから、将来的な成長への期待感もにじませている。

専門家の間では、1日あたり5〜7兆ドルに上るVisaの取引量と比較すると、ステーブルコインの1日あたり20〜30億ドルという取引量はまだ小さいものの、1990年代後半のeコマース市場に例えられるほど成長の可能性を秘めているとの見方もある。

今後の注目点は、米国をはじめとする各国での規制整備の進展と、それに伴う企業の本格的な参入がどのように進むかだ。Visaのような決済大手の動向は、ステーブルコイン市場の行方を占う上で引き続き重要な指標となりそうだ。

(参考:Decrypt 公式サイト